三人組
原案:すたすく
「ふふ、可愛いね牛野君」
「ひえ!」
「ちょっと待て早乙女、何をしている」
「何もこうもないよ。見てわからないの?」
隣に座った早乙女さんはそう言って僕の腰に手を回した。
その手付きに僕は持っていたフォークを取り落としそうになる。
エプロンの上にいた手は、少しずつ体のラインを確かめるように上に上がって、隙間からエプロンの中に入ってくる。
「あ、あのっ」
エプロン下、服ごと胸を緩く揉まれ、僕は制止の声をあげた。
それでも早乙女さんはやめようとしない。
向かいに座っていた獅子さんが立ち上がる。
「独り占めとはいい度胸だな」
「やめ、早乙女さ……んっ」
不機嫌そうに笑った獅子さんが僕の隣に座り直す。
僕の手から白いクリームに包まれたケーキの欠片が刺さったフォークが取り上げられる。
静かに皿の上に置くと、獅子さんの手も同じように僕に回された。
耳元で名前を呼ばれてぞくりとする。
「ふ……く、やめて、あっ――」
**
「……みたいな事になったら萌えると思わない?」
早乙女は溜息を漏らしながら、自身の妄想の同意を蠍田に求めた。
しかし蠍田は作業の手を止める事も、早乙女に目をやる事もなく、嫌そうに眉間に皺を寄せるだけだ。
「だから早く性転換できる薬を作ってよ」
「そんなものはない。くだらない事を言ってないで、もう帰れ。来るな」
相変わらずの逞しい妄想力だ。
蠍田は白瓶の用意したドリンクをストローで吸い上げる。
「かめがいたら追い出してもらうのに」
小さく舌打ちをしながら、背後で勝手に続けられる妄想の話に毒づいた。
2012-03/15